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魔轟三鉄傑のあゆみ⑤【中級 対決! 外道大臣!】

魔轟三鉄傑のあゆみ⑤【中級 対決! 外道大臣!】

さて、問題は地獄三十六歌仙の首魁がどこにおるかだが。

シャティが捕まってたっていうどこにいるんじゃない?

シャティ

ごめんなさい、逃げるのに必死で詳しい場所は覚えてないんです。
どこかのお城だったと思うんだけど……。

トゥーラ

城と言えば--
この近くに、外道大臣ゲスタイガーの城があるね。
デスだけを集めてパーティを開いてるって話さ。

あうわー。
ものすごーくどっかできいたような名前ー……。

デスの集う城か……そこが本拠地やもしれぬな。
さにあらずとも、手がかりぐらいは得られよう。

では、ゲスのフリして乗り込みましょうぞ!
ぞぞ!

トゥーラ

なら、あたしは外でこの子を守ってるよ。
女神がゲスの真似事をしたってんじゃ、コケンに関わるしね。

“流れの女神”とか言ってる時点で、コケンも何もないんじゃない?

リエンたちはさっそく、外道大臣ゲスタイガーの居城へと向かった。

城の前には、いかにもな人相の門番がおり、登城する者たちを検分している……。

門番

待ちな~~~っ!!
この城にゃあゲスしか入れねーぜーっ!!

ぞ~ばぞばぞば!
ここか~い、ゲスパーティの会場は~~っ!

だ~むだむだむ!
どんなゲスがおるか、楽しみじゃのう~~っ!!

門番

ケケケーッ!
てめーらなかなかのゲス笑いじゃねえか~~っ!
よ~~し、通っていいぞーーっ!!

し、失礼しまーす……。

門番

なんだてめーっ!
“失礼します”なんてよぉーーっ、
どーにもゲスらしくねーなぁ~~~っ!

門番

ひょっとして、ゲスじゃねえんじゃねえのカーッ!

げ……げーっひゃっひゃっひゃっひゃっ!
あたしは弱い者イジメが大好きな、悪い女だよ~~っ!

門番

お~~っと、こいつはかなりのゲスだぜーっ!
能あるゲスは爪を隠すってかーっ!
よ~~し、通れ~~~~っ!!

そんな感じで城に入った。

ザル!!!!!

話が早くてよかろう。

城内のホールには、思い思いの正装に身を包んだゲスたちが集まり、楽しげに談笑している。

何か情報は得られぬものかと、ゲスなゲストたちの会話を立ち聞きしてみると……。

ゲスなゲスト

ホホホ、奥様、お聞きになりまして?
先日、たーくの主人は、わざと馬車にぶつかって、骨が折れたと慰謝料を請求したんでゲスのよ~!

ゲスなゲスト

あ~ら奥様、たーくの主人なんて、二束三文のツボを霊験あらたかな品と大ボラぶっこいて、大儲けしたんゲスわーっ!

うわー……マジでゲスばっかだわ……。

ぞばっばっば。
こんな場所、一刻も早く立ち去りたいでゲスねえ~~っ!

そんだけ楽しそうにしといて。

おうい、おぬしら。
良いことを聞いた。
主催の外道大臣ゲスタイガーが、置くの部屋で休んでおるそうだ。

そのへんのザコから話を聞くより早そうね。
よし、行ってみるわよ!

3人はゲスタイガーの部屋へと向かい、並び立つ守衛たちに頭を下げる。

げっへっへ、すみませんねえ、旦那方からっ!
ちょいとゲスタイガーさまにごあいさつをさせていただきとうございますぜーっ!

サクサク通ろうとしたが、守衛たちは鋭く目を光らせて武器を構える。

守衛

お~~っと待ちな!
てめーらーっ、生粋のゲスじゃねえなあ~~っ!?

守衛

本当は気高い魂を持っているのに、ファッションでゲスを気取っているって、そんな感じがにじみ出てやがるぜーっ!!

ありゃりゃのりゃん。
やっぱプロの目はごまかせませんねー。

プロってなんじゃい。

バレてしまっては仕方がない。
強行突破じゃー!

守衛たちを蹴散らし、奥の部屋へと突入する。

宴の証か、飲み干された酒瓶や、乱暴に喰い捨てられた食べ物が、部屋中に散らばっている。

その中心で、やはり妙に見覚えのある亜人が、優雅にワインをたしなんでいた。

フッフフン。
侵入者がいると聞いたので誰かと思えば、名高い名高い魔轟三鉄傑ではないか!

あんたが外道大臣ゲスタイガー!?
……よね、どーせ。

い☆か☆に☆も!!
我輩こそ外道大臣ゲスタイガー!!

貴様らのせいで、外法を広める7人衆も、それを雇った我が国の皇女も、それを陰ながら支える謎の老人も総崩れ!
計画が台無しじゃい!!

むう!
かの悪行、うぬも一枚噛んでおったか!

この恨み、晴らさでおくべきか!
いずれ貴様らを始末するべく雇っておいた“掃除屋”の出番が早くも来たわ!!

先生!
お願いします!!

???

どうれ……。

ゲスタイガーがパッと腕を振るうと、部屋の奥で、ゆらりと影が立ち上がった。

禍々しい骸骨を背後に控えさせた、黒衣の女である。

ゆらり。ゆらり。
黒く澱んだ陽炎とでも形容すべき異様な足取りで、ゆっくりと歩みを進めてくる。

その不気味さに--
そして、それ以上に恐るべき魔力の気配に、リエンの背筋がぞっと凍った。

なに、あの女--とんでもない魔力よ……!?
あとあの後ろのガイコツなに!?

恐らく幻獣……
己が魔力を具現化し、自立させたものだ!
類まれなる使い手たる証……心せよ!

???

フフ…。

女は、月を食む夜間のごとき冷たく妖しい笑みを浮かべ--

手にした鎌で、床に散らばった酒瓶やら菓子くずやらをサッサッと集め始めた。

???

フあーもーこんなに散らかして~。
ダメですよ~、
パーティだからってハメ外しすぎたら。

え?あの……?

???

すみません、ここ、紙とプラ分けます?

じゃなくて……メイフウ先生。
あの。何してんすか。

メイフウ

何って、掃除ですよ。
私、“掃除屋”って言ったじゃないですか。

え?マジで?
文字通り系?
比喩とか、そういうアレじゃないの?

どうやらアテが外れたみたいね。
観念しなさい、ゲスタイガー!

え、ええい!
我輩とて地獄三十六歌仙がひとり!
やったるわい!

なんと、貴様自身が歌仙であったか!

然~りかりかり!
見せてくれよう我が暗黒超仙術!
ゲスフィーーーーるどッ!!

ゲスタイガーの身体から魔力の波動が放たれた。
それはたちまち部屋中を席巻し、リエンたちにずしりとのしかかる。

くっ……!?
いきなり身体が重く……!?

むう……!
いったいいかなる力が働いておるのだ!?

ぞば?

クックック……
我らゲスに、崇高な志などはない。
欲のままに行き、他者を蹴落とすが本性ッ!

このゲスフィールドは、そんなゲスのための空間!
“崇高な志”を抱く者あらば、その“重み”を物理的な重みへと変えて動きを封じるのだァーッ!

ぞ、ぞばあーっ!
思い!重すぎるゥ!
慈悲の心を世に広めんとする志が、
ア、鋼の重さでのしかかるぅーーーーッ!!

おいこら。

クケケケーッ!
これぞゲスの仙ロードを極めしゲス魔の仙術!
魔轟三鉄傑よ、無駄に重い志を抱いたまま死ねぇーーいっ!

黒猫のウィズ 魔轟三鉄傑

メイフウ

ゾイベルングス・アクツィオン!!

黒い炎が、部屋を満たした。

雄叫びを上げる黒炎。
ひとかけらの熱さえ持たず、むしろ心胆を凍てつかせる冷たさに満ちたそれが、瞬く間に部屋を舐め尽くす。

あれ……?
重さがなくなった。

リエンは、きょとんと自らの身体を見下ろした。

炎は何も焼き焦がすことなく消えていた。
ゲスタイガーによってもたらされた、魔性の重みとともに。

な、なに!?
我が仙術が!

メイフウ

掃除を。
させていただきました。

静かな声が、その場の全員を振り向かせる。
“掃除屋”メイフウ--彼女は、驚くほどまっすぐな眼差しをゲスタイガーに向け、つぶやいた。

メイフウ

うかつでした。
外道大臣ゲスタイガー……まさか、あなたがそんなゲスであったとは……。

ええー……。

いや名前ー……。

メイフウが、ゆるりと鎌を持ち上げる。
あわせて、背後の骸骨がカタカタと笑った。

メイフウ

私はメイフウ。
“掃除屋”メイフウ。
旅の掃除屋とは、世を忍ぶ仮の姿……
世のゴミを掃除することこそが真のなりわい!

え?マジで?
そいうアレではあるの?

メイフウ

外道大臣ゲスタイガー!
あなたもきれいにして差し上げます!

ええい、仕方がない。
かくなる上は最終兵器!

魔轟三鉄傑、そして“掃除屋”メイフウの猛攻を受けたゲスタイガーは、ボロボロになりつつも、部屋からホールへ飛び出した。

ゲス

あーれー!

ああっ!
そのへんのゲスをゲス質に!

ふはーはははー!
このゲスの命が惜しければ武器を捨てろー!

くッ……ゲスめ!!

ひょほほほほー!
なんとでも言えー!
勝てば官軍、出世もグン☆グン!

ゲス

た、助けてくれぇー!
知り合いからだまし取った土地の権利書あげるから!!

こっちもゲスめ!!

メイフウが、唇を噛みながら鎌を捨てた。

メイフウ

これは、止むをえませんね……。

そうかな。

トゥーラ

襲いねえ、連中。
おなか空いてないかい、シャティ。

シャティ

そうですね……。
そろそろお夕食、作りましょうか。

ふたりが、野営の準備を始めようとしたとき。

イール

我は地獄三十六歌仙がひとり、ウナギ魔のイール!
その少女、頂戴いたす!

草むらから現れた歌仙が、手にしたウナギを長く伸ばしてシャティを捕獲した!

シャティ

きゃあっ!

トゥーラ

しまった!シャティ!

イール

こちらを張っておいて正解だったわ!
フフフ、我がウナギはぬめる、ぬめるぞぉ?

トゥーラ

その子を離しな!

イール

そうはいかん。
このまま退散させてもらう。
ウナギのごとく、ぬめぬめとなあ!

一条の閃光が、闇を裂いた。

それはイールの手から伸びたウナギにブチ当たり、たやすく引きちぎっていく。

イール

そ、そんな!
俺のウナギがぁ!

???

どきな。

駆け抜けた光を追うように、闇の奥から、のそりと男が現われた。

巨大な弓を担いだまま、ゆっくりと歩を進め--それこそ矢のような鋭い視線で、じろりとイールを睨みつける。

???

仕事の邪魔だぜ、兄ちゃん。

イール

ヒ、ヒィッ!!

ぬめぬめと逃げていくイールに目もくれず、男は、ドン、と大弓を地面に下ろした。

そして、ゲスタイガーの城を見上げ、大弓--バリスタの角度を調整していく。

???

嬢ちゃん。
赤と青、どっちが好きだ?

唐突な質問。
男の後ろでちぎれたウナギをほどいていたシャティが、目をぱちくりさせた。

シャティ

えっ?
あ、青……かな。

???

じゃあ、今日はそっちだ。

男はうなずき、弓を撫でた。

すると、彼自身の魔力が集い、大きな青い矢を形成する。

それを大弓につがえ、機械式の弦を引き--

無言のまま、あっさりと放った。

轟音と衝撃が、城を揺らした。

うひゃっ!
な、なんなのよ!?

これは--バリスタの矢か?

壁を突き破って飛来した大きな矢が、リエンらとゲスタイガーの間を貫き、太い柱に突き刺さって止まる。

次の瞬間、その矢がバラリと崩れ、なかから大量の金貨が転がり落ちた。

うひょー!
ザックザクだーい!

ゲスタイガーは思わずゲス質を放り出し、金貨の海へとダイブする。

なんかわかんないけどとりあえず今ッ!

リエンはその後頭部へ鋭い飛び蹴りを叩き込んだ。

あんぎゃー!

ゲスタイガーは頭から金貨に突っ込み、そのままガクリと倒れ伏す。

ゲス

た、助けてくれてありがとうー!
あ、これ権利書です。

いらないし。
つーか持ち主に返してきなさい!

しっしっとゲスを追っ払っていると、メイフウがにこやかに近づいてくる。

メイフウ

なんとかなりましたね。

何者かに助けられたようだな。

そうそう、あんた、さっきは助かったわ。
あいつの仙術、どうやって破ったの?

メイフウ

同じ仙術を使ったまでです。
もとは私も地獄三十六歌仙がひとりゆえ……。

え、そうなの!?

メイフウ

はい。
やるころなすことあくどいのと、音楽性の違いから袂を分かちましたが。

名前で気づけや!
あとあんたの音楽性どこよ!?

???

終わったようだな。

トゥーラ

今の矢はなんだい?

???

アンチゲス矢だ。
ゲスの目を眩ませる効果がある。

男は興味なさそうに告げると、大弓を担いで歩きだす。

シャティ

あ、あの!

その背に、シャティが声をかけた。

シャティ

あなたは……?

ルディオ

ルディオ。旅のバリスタ使いさ。

振り向きもせずに答え、彼は闇夜に消えていった。

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